(2026年7月22日 公開)
【2026年9月5日追記】施行時期がほぼ確定
全都道府県の令和7年度最低賃金が時給1,016円を超えたことを受け、賃金要件(月額8.8万円以上)の撤廃時期は法律上の要件を満たす形になりました。厚生労働省が公表している最新の案内資料でも、賃金要件の撤廃は「令和8年(2026年)10月」で予定されている旨が明記されており、当初「政令で今後確定」としていた施行時期は実質的に確定した状況です。詳細は本文「2. いつから撤廃される?」をご確認ください。
【2026年9月8日 追記】手取り減をやわらげる緩和措置を追記
加入直後の手取り減を抑える保険料調整制度(激変緩和措置)の内容を追記しました。標準報酬月額12.6万円以下の人は2026年10月〜2029年10月まで(最長3年)従業員負担分の一部を事業主が肩代わりでき、急な手取り減がやわらぎます(3年目は軽減が半分に縮小)。詳しくは本文「手取り減はどこまで抑えられる?」をご覧ください。
パート・アルバイトで働く人にとって長年の関心事だった「106万円の壁」が、2026年10月をめどに撤廃される見通しになりました。2025年6月に成立した年金制度改正法により、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する際の「賃金要件」(月額8.8万円以上、年収換算で約106万円以上)がなくなることが決まっています。「自分は加入対象になるのか」「手取りはどのくらい変わるのか」と気になっている方も多いはずです。本記事では、厚生労働省の公式情報をもとに、撤廃の全体像から対象者の条件、加入までの手続き、手取りへの影響の目安、注意点までケース別にまとめました。
目次
106万円の壁とは?撤廃の全体像
画像出典: 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
「106万円の壁」とは、パート・アルバイトなど短時間労働者が勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入するかどうかを判定する条件のひとつ、「賃金要件」(月額賃金8.8万円以上、年収換算で約106万円以上)のことを指します。この要件を超えて社会保険に加入すると、給与から保険料が天引きされて手取りが減るため、多くの短時間労働者がこの年収を意識して労働時間を抑える「働き控え」が起きてきました。
厚生労働省によると、2025年6月に成立した年金制度改正法により、この賃金要件は「最低賃金の状況を踏まえ、令和7(2025)年6月から3年以内に撤廃する」と法律で定められています。社会保険労務士事務所や各種メディアの多くは、具体的な撤廃時期の目安として2026年10月を挙げていますが、正式な施行日は今後の政令で確定する点には留意が必要です。
撤廃の背景には、最低賃金の継続的な引き上げがあります。ある試算では、令和5年度の最低賃金水準で週20時間働くとすでに賃金要件の8.8万円を超える人が151万人おり、令和6年度の引き上げでさらに62万人が加わって、合計213万人が該当する状況になっていたとされています。賃金要件そのものの意味合いが薄れてきたことが、撤廃に至った大きな理由のひとつです。
いつから撤廃される?施行時期のポイント
画像出典: 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
賃金要件は2026年10月がめど
撤廃されるのは、加入要件のうち「賃金要件」(月額8.8万円以上)だけです。次の3つの要件は撤廃後も引き続き維持されます。
つまり2026年10月以降は、年収が106万円未満であっても、上記の要件を満たしていれば社会保険への加入対象になり得るということです。
企業規模要件は2027年10月から段階的に縮小
勤務先が「特定適用事業所」に該当するかを決める企業規模要件(現在は従業員数51人超)は、賃金要件とは別のスケジュールで段階的に縮小されます。厚生労働省の公式情報によると、対象企業の範囲は次のように拡大していく予定です。
この改正により、新たに約200万人が厚生年金・健康保険の加入対象になると見込まれています。ある試算では、内訳として第3号被保険者(主に配偶者の扶養に入っている人)が90万人、第1号被保険者(自営業者やその家族など)が70万人、60歳以上の未加入者が40万人とされています。
対象になるのは誰?条件をケース別に解説
画像出典: 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
加入対象となる4つの条件(賃金要件撤廃後)
2026年10月以降、社会保険への加入対象になるかどうかは、次の4条件をすべて満たすかどうかで判断されます。
ケースで見る「自分は対象?」
加入までの流れ|手続きステップ
画像出典: 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
- ステップ1: 自分の勤務先が「特定適用事業所」に該当するか(その時点の企業規模要件を満たす従業員数か)を確認する
- ステップ2: 自分の所定労働時間が週20時間以上かを確認する
- ステップ3: 2026年10月以降は年収要件を気にせず、上記条件に該当すれば勤務先が日本年金機構へ資格取得の届出を行う
- ステップ4: 加入後は給与から厚生年金保険料・健康保険料が天引きされる。配偶者の扶養から外れる場合は、配偶者の勤務先にも扶養異動の届出が必要になることがある
- ステップ5: 対象かどうか不明な場合は、勤務先の人事・総務担当者や年金事務所に確認する
手取りはどうなる?シミュレーションで確認
画像出典: 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
社会保険に加入すると、給与から保険料が天引きされるため手取りは減少します。ある試算例では、月収9万円程度のケースで次のような変化が見込まれています。
減少幅は収入額や保険料率によって異なるため、あくまで目安として捉えてください。一方で、社会保険に加入することで将来受け取る厚生年金の金額が増えるほか、病気やけがで働けないときの傷病手当金、出産時の出産手当金といった給付を受けられるようになる点はメリットです。手取りの減少だけでなく、こうした保障面の変化も踏まえて考えることが大切です。
注意点・よくある誤解
130万円の壁とは別の制度
「130万円の壁」(主に健康保険の被扶養者として認定される年収の上限に関わる基準)は、今回撤廃される106万円の壁(賃金要件)とは別の制度です。106万円の壁が撤廃されたからといって、130万円の壁も同時になくなるわけではありません。SNS上でも両者を混同した声が見られるため、注意しましょう。
施行日は2026年10月で実質確定(2026年9月追記)
当初、法律上は「令和7年6月から3年以内」という幅を持った規定で、正式な施行日は政令で今後確定するとされていました。しかし全都道府県の令和7年度最低賃金が時給1,016円を超えたことを受け、厚生労働省の最新の案内資料では賃金要件の撤廃時期が「令和8年(2026年)10月」と明記されており、施行時期は実質的に確定しています。念のため最新情報は厚生労働省の公式サイトで確認することをおすすめします。
企業規模要件が残るため「全員が対象」ではない
賃金要件がなくなっても、企業規模要件(現行は従業員51人超)を満たさない会社で働く人は、2026年10月時点ではすぐに対象にはなりません。自分の勤務先の従業員数と、上記の段階的な拡大スケジュールを照らし合わせて確認する必要があります。
配偶者の扶養手当・家族手当への影響も確認を
社会保険に加入して配偶者の扶養から外れると、配偶者の勤務先が支給している家族手当・扶養手当の対象から外れるケースがあります。手当の支給要件は会社ごとに異なるため、事前に確認しておくと安心です。
手取り減はどこまで抑えられる?保険料調整制度(激変緩和措置)
「106万円の壁」の撤廃で最も不安が大きいのが手取りの減少ですが、これを一定期間やわらげるための保険料調整制度(激変緩和措置)が用意されています。加入直後の急な手取り減を抑える仕組みで、対象になる人は知っておくと損をしません。
対象になる人
標準報酬月額が126,000円(月収おおむね12.6万円)以下の短時間労働者。パートで新たに社会保険へ加入する多くの人が該当します。
対象期間
2026年10月〜2029年10月まで。2026年10月から加入する人は最長3年間、軽減を受けられます。
仕組み
本来は労使で折半する保険料のうち、従業員が負担する分の一部を事業主が肩代わりでき、その負担を国が支援します。結果として、従業員の給与から天引きされる保険料が抑えられ、手取りの落ち込みがやわらぎます。
注意点(ここが落とし穴)
3年目は軽減割合が半分に縮小し、期間が終わる2029年10月以降は本来の労使折半に戻ります。恒久的な措置ではないため、「ずっと手取りが守られる」と考えるのは禁物です。措置終了後を見据えて働き方を考えておく必要があります。
あわせて事業主向けにはキャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)があり、労働時間の延長や賃上げで従業員の手取りが減らないよう対応した事業主に、小規模企業では1年目最大50万円/人・2年目最大25万円/人が支給されます。勤務先がこの助成金を使って労働時間や時給を引き上げてくれるケースもあるため、加入前に会社の対応方針を確認しておくと安心です。
Xでの反応
「月給20万円の人が106万円を超えると、厚生年金保険料が月1.8万円ほど増える。手取りは思ったより減る」
— @takeshi_ai_jp(2026-07-19)
「撤廃後も週20時間という労働時間要件はそのまま残るのが引っかかる。働き控えが完全になくなるわけではない」
— @akiko587681583(2026-07-19)
「賃金の壁は2026年10月になくなる予定だが、職場の人数の壁は別に残っている、という整理がわかりやすかった」
— @miyu_taizou(2026-07-19)
「人手不足なのに、働く時間を増やすと手取りが減ってしまう。この矛盾に改めて気づかされる」
— @KeiriGorilla(2026-07-18)
手取りの減少を心配する声が目立つ一方で、企業規模要件や労働時間要件など「まだ残る条件」を整理して伝える投稿にも関心が集まっていました。
よくある質問
Q. 106万円の壁とは何ですか?
A. パート・アルバイトなど短時間労働者が、月額賃金8.8万円(年収換算で約106万円)以上になると勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務が生じる仕組みのことです。加入すると保険料負担で手取りが減るため、多くの人がこの年収を意識して働く時間を調整する「壁」として知られてきました。
Q. いつから撤廃されますか?
A. 年金制度改正法により、賃金要件は最低賃金の状況を踏まえて2025年6月から3年以内に撤廃すると定められており、2026年10月が想定時期として多くの専門家・報道で示されています。ただし正式な施行日は今後政令で確定します。
Q. 撤廃されたら誰でも社会保険に加入することになりますか?
A. いいえ。撤廃後も「週20時間以上の所定労働時間」「2か月を超える雇用見込み」「学生でないこと」「勤務先が一定規模以上の企業であること」という要件は残ります。これらすべてを満たす人が新たに加入対象になります。
Q. 130万円の壁はどうなりますか?
A. 130万円の壁(被扶養者として認定される年収の基準)は今回の賃金要件撤廃とは別の制度で、原則として存続します。106万円の壁の撤廃と混同しないよう注意が必要です。
Q. 中小企業で働くパートは影響を受けますか?
A. 勤務先の企業規模要件(現在従業員51人超)を満たさない場合、2026年10月時点では対象外のままです。企業規模要件自体も2027年10月以降段階的に縮小される予定のため、対象になる時期は勤務先の規模により異なります。
Q. 社会保険に加入すると手取りはどのくらい減りますか?
A. 一例として月収9万円程度の場合、月1.3万〜1.4万円ほど手取りが減少するとの試算があります。減少幅は収入や保険料率により異なるため、あくまで目安としてご確認ください。
Q. 学生アルバイトも対象になりますか?
A. いいえ。学生は引き続き適用除外とされており、今回の改正後も社会保険加入の対象外です。
Q. 社会保険に加入するとどんなメリットがありますか?
A. 将来受け取る年金額(厚生年金)が増えるほか、健康保険からの傷病手当金や出産手当金などの給付を受けられるようになる点がメリットとして挙げられます。
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まとめ
2026年10月をめどに、社会保険加入の賃金要件(106万円の壁)が撤廃される見通しです。ただし週20時間以上の労働時間要件や企業規模要件は残るため、「全員がすぐに対象になる」わけではありません。自分の勤務先の従業員数や労働時間を確認し、加入対象になりそうな場合は手取りへの影響と将来の年金・保障面のメリットを踏まえて働き方を検討しましょう。正式な施行日や詳細は、今後の政令や厚生労働省の公式発表で確定していくため、最新情報の確認をおすすめします。
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