パートやアルバイトで働く人の手取りを左右してきた「106万円の壁」が、2026年10月1日に撤廃されます。これまで社会保険への加入ラインだった「月額賃金8.8万円(年収106万円相当)」という賃金要件がなくなり、判断の軸は「週20時間以上働くかどうか」に移ります。この記事では、いつから何が変わるのか、誰が対象になるのか、そして加入で手取りがどう変わるのか(逆転しないライン)までを公式情報をもとに整理します。
【2026年9月19日追記】新たに加入対象となる短時間労働者の保険料負担を抑える「保険料調整制度」(3年間の時限措置)の対象要件・軽減期間を追記しました。詳細は本文「保険料調整制度とは?」セクションをご確認ください。
【2026年9月23日追記】保険料調整制度について、対象事業所の段階的な範囲(2026年10月〜2027年9月は任意特定適用事業所のみが対象)と、3年目の軽減幅の目安を追記しました。詳細は本文「保険料調整制度とは?」セクションをご確認ください。
結論
2026年10月1日に「年収106万円(月8.8万円)」の賃金要件が撤廃。今後は週20時間以上働くと社会保険に加入する形へ。加入すると年約15〜16万円の保険料負担が発生し、年収およそ125万円を超えると加入前の手取りを上回るのが目安。扶養内で抑えるなら週20時間未満に、しっかり働くなら125万円超を狙うのが損をしにくい選択です。
画像出典: 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
106万円の壁とは?2026年10月に何が変わる
「106万円の壁」とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者が勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する基準の一つ、月額賃金8.8万円以上(年収に換算して約106万円)という賃金要件を指す通称です。この壁を超えると給与から社会保険料が天引きされ、いったん手取りが減るため、勤務時間を調整する人が多くいました。
2026年10月1日から、この賃金要件そのものが撤廃されます。背景にあるのは最低賃金の上昇です。全国平均の最低賃金が時給1,000円を超え、週20時間働けば自然と月8.8万円に達するケースが増えたため、賃金要件が実質的に意味を失いつつありました。厚生労働省の試算では、この改正で全国で約200万人が新たに厚生年金の加入対象になると見込まれています。
「働いても保険料がかからない範囲」が狭くなる
これまでは「月8.8万円未満に抑えれば加入しなくてよい」という調整ができました。撤廃後はこの逃げ道がなくなり、週20時間以上働く時点で加入という判定に一本化されます。つまり、賃金の多寡ではなく労働時間で線引きされる時代に変わるということです。
いつから?「週20時間の壁」への移行スケジュール
賃金要件の撤廃は2026年10月1日施行です。これにより、社会保険加入を判断する実質的なラインは「106万円の壁」から「週20時間の壁」へと移ります。時系列で整理すると次のとおりです。
月額賃金8.8万円(年収106万円相当)の賃金要件を撤廃。判断軸が「週20時間以上か」へ移行。
撤廃されるのは賃金要件のみ。勤務先の従業員数(51人以上)などの要件は当面残り、段階的に縮小していく(後述)。
なお「106万円」という数字は税金の話ではなく社会保険の話です。所得税・住民税がかかり始める「103万円・住民税の壁」や、配偶者の扶養から外れる「130万円の壁」とは別物なので、混同しないよう注意してください。
対象になるのは?加入の4要件をチェック
賃金要件が消えても、短時間労働者が社会保険に加入するかどうかは、残る要件で判断されます。2026年10月以降、次の要件をすべて満たす人が加入対象です。
残業ではなく契約上の労働時間で判定。これが新しい実質的な「壁」。
2か月を超えて働く見込みがあること。
昼間学生は原則対象外(夜間・定時制などは例外あり)。
従業員数が一定以上の企業。現在は51人以上が対象で、今後段階的に引き下げられる。
画像出典: 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
週20時間未満なら扶養内を維持できる
逆に言えば、週20時間未満で働く人は撤廃後も加入対象になりません。配偶者の扶養(第3号被保険者)を維持したい場合は、労働時間を週20時間未満に抑えるのが基本の考え方になります。ただし年収130万円を超えると別途「130万円の壁」で扶養を外れるため、時間と年収の両面で確認が必要です。
企業規模要件は2035年まで段階的に撤廃
2026年10月時点で残る「企業規模(従業員数)」の要件は、その後も段階的に引き下げられ、最終的に撤廃される予定です。今は対象外の中小企業で働く人も、いずれ加入対象に入ってきます。スケジュールは次のとおりです。
従業員数36人以上の企業へ拡大
従業員数21人以上の企業へ拡大
従業員数11人以上の企業へ拡大
企業規模要件を撤廃(すべての事業所が対象)
つまり「うちの職場は小さいから関係ない」という状態は永続ではありません。数年単位で対象が広がっていくため、早めに自分の働き方の方針を決めておくと安心です。
【損得試算】加入で手取りはどうなる?逆転しないライン
ここが最大の関心事です。社会保険に加入すると、給与から健康保険料と厚生年金保険料が天引きされます。負担はおおむね賃金の約15%(労使折半後の本人負担分)で、年収106万円ラインで働く人なら年間およそ15〜16万円の保険料負担が新たに発生します。
手取りの目安(協会けんぽ・年齢や地域で変動)
・年収106万円で加入 → 保険料 約15〜16万円/年 → 手取り 約90万円前後
・年収 約125万円 → このあたりで加入前(壁の手前)の手取りを上回る目安
・年収 130〜150万円 → 保険料を差し引いても手取りがしっかり伸びる領域
ポイントは、壁を超えた直後は一時的に手取りが減る「手取りの谷」が生じること。しかし年収およそ125万円を超えれば、保険料を払っても加入前より手取りが増えるのが一般的な目安です(実際の分岐点は料率・年齢・扶養状況で前後します)。中途半端に「106万〜120万円台前半」で止めるのが、いわゆる”働き損”になりやすいゾーンです。
保険料は「払って損」だけではない
手取りが減る面だけが強調されがちですが、厚生年金に加入すると将来受け取る年金額が増え、さらに病気やケガで働けないときの傷病手当金、出産手当金など健康保険の給付も受けられるようになります。目先の手取りだけでなく、こうした保障が上乗せされる点も加味して判断するのが賢明です。
働き方の正解は?3つの選択肢
画像出典: 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
撤廃後にとりうる方針は、大きく3つに整理できます。自分の家計と将来設計に合うものを選びましょう。
労働時間を週20時間未満に抑え、これまで通り扶養内で働く。手取りの目減りを避けたい人向け。
加入を前提に、手取りが加入前を上回る125万円超まで働く。将来の年金と保障も増える。
加入はするのに稼ぎが伸びず、手取りが最も凹みやすいゾーン。ここで止めるのは非推奨。
保険料調整制度とは?新規加入者の負担を3年間軽くする特例
2026年10月の改正では、新たに社会保険に加入する短時間労働者の負担を抑えるため、「保険料負担調整措置」という時限的な特例も用意されています。制度そのものの知名度が低く見落としやすいため、対象になりそうな人はチェックしておきましょう。
対象になるのは?
- 2026年10月1日以降に企業規模要件の緩和などで新たに社会保険の適用事業所となった職場(任意特定適用事業所を含む)で働く人
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月収13万円未満(標準報酬月額12.6万円以下)
- 学生でないこと
軽減の内容と期間
会社が被保険者の健康保険料・厚生年金保険料を一時的に立て替えて追加負担することで、対象者本人の保険料負担が軽くなる仕組みです。会社が立て替えた分は3か月後の保険料から差し引く形で還付されるため、最終的に会社の負担が増えることはなく、加入者本人が将来受け取る年金額が減ることもありません。利用できる期間は通算3年間で、3年目の軽減幅は1・2年目の半分になります。申請(申出)は対象になった日から2年以内に「保険料調整開始申出書」を会社経由で提出する必要があるため、該当しそうな人は勤務先の担当部署に早めに確認しておくと安心です。
対象事業所は2027年10月から段階的に広がる
この制度がすぐに使えるかどうかは勤務先の規模で変わります。2026年10月〜2027年9月の期間は、企業が任意で社会保険を適用した「任意特定適用事業所」で働く人のみが対象で、対象になる会社はまだ限られています。2027年10月以降、企業規模要件の段階的な引き下げ(従業員数36人以上への拡大)により新たに社会保険の適用対象となった事業所で働く人も対象に加わります。自分の勤務先がいつから対象になるかは、会社の担当部署か日本年金機構・協会けんぽの案内で確認してください。
※標準報酬月額ごとの具体的な軽減額は、協会けんぽが公表した都道府県別の保険料額表(エクセル・PDF)で確認できます。最新情報は日本年金機構・協会けんぽの公式発表でご確認ください。
注意点・見落としやすいポイント
制度はプラス面ばかりではありません。判断前に次の点を確認してください。
- iDeCo改正2026年12月|上限6.2万円・70歳加入の対象と影響
- 配偶者の勤務先の「家族手当」が扶養(年収要件)を条件にしている場合、手当が止まって実質的な減収が大きくなることがある。就業規則を要確認。
- 保険料は毎月天引きされるため、月の手取りが数千円〜1万円台で減る。家計の固定費見直しも合わせて。
- 「103万円(所得税)」「130万円(扶養)」の壁とは別基準。複数の壁を同時に確認する必要がある。
特に、収入を大きく増やすつもりがなく家族手当も大きい家庭では、あえて週20時間未満で働き続ける方が世帯の手取りは有利になるケースもあります。一律に「加入した方が得」とは限らない点は正直にお伝えしておきます。
よくある質問(FAQ)
106万円の壁はいつ撤廃される?
2026年10月1日です。月額賃金8.8万円以上(年収106万円相当)という賃金要件が撤廃されます。
撤廃後は何を基準に加入が決まる?
週の所定労働時間が20時間以上か、が実質的な基準です。加えて雇用見込み2か月超・学生でない・勤務先が特定適用事業所、の要件を満たすと加入します。
加入すると手取りはどのくらい減る?
年収106万円前後なら年間およそ15〜16万円の保険料負担が発生します。年収約125万円を超えると、保険料を払っても加入前より手取りが上回るのが目安です。
中小企業で働いていれば関係ない?
当面は企業規模要件(従業員数)が残りますが、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上へ拡大し、2035年10月に撤廃されます。いずれ多くの職場が対象になります。
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まとめ
2026年10月1日、社会保険の「106万円の壁(賃金要件)」が撤廃され、加入判断は「週20時間の壁」へと移ります。新たに約200万人が加入対象となる大きな改正です。加入すると年約15〜16万円の保険料負担が生じますが、年収およそ125万円を超えれば手取りは加入前を上回り、将来の年金や傷病手当金などの保障も手厚くなります。扶養内で抑えるなら週20時間未満、しっかり働くなら125万円超を目指すのが損をしにくい選び方です。企業規模要件も2035年10月に完全撤廃される予定で、中小企業で働く人も順次対象に。自分の働き方を、時間と年収の両面で早めに見直しておきましょう。(2026年9月8日 公開)
参考・出典
※保険料額・手取りの試算は協会けんぽの料率をもとにした目安で、年齢・地域・扶養状況により変動します。最新かつ正確な内容は必ず厚生労働省や日本年金機構の公式情報でご確認ください。
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